さて、「感震ブレーカーとは何? どういう目的で設置するの?」と、関心を持っている人は意外と多いです。
そこで感震ブレーカーの必要性と、設置したあと、どのように作動するのかを説明します。
感震ブレーカーは、普通「震度5強以上の揺れを感知すると、
分電盤の主幹ブレーカーを自動的に遮断して、停電が復旧した後の通電火災を防止する」ために設置する装置です。
でも普通、ブレーカーといえば、分電盤に組み込まれている漏電ブレーカーや、
照明とかコンセント用のブレーカー、それにエアコン専用のブレーカー等を思い浮かべると思います。
しかしこれらのブレーカーは漏電や過電流には反応しますが、地震の揺れを感知して電源を遮断するということはできません。
一方、感震ブレーカーには加速度センサーというものが内蔵されており、
これによって地震を検知し信号を出力することで、分電盤の主幹ブレーカーを遮断(切る)することができます。
でも、そもそも”感震ブレーカー”という名称は紛らわしいと思う。
なぜかと言うと、ブレーカーそれ自体が地震を感知して電気を止めるかのような印象を受けるからだ。
しかし実際の分電盤を見ると、分電盤に内蔵された感震リレー(センサー)や、外付けタイプの感震リレー等が揺れを感知しています。
揺れを感知すると、これらの機器からは疑似漏電信号が出力され、
それを主幹漏電ブレーカーが検知、そして電源を遮断するという仕組みです。
※一般的な住宅用分電盤の漏電ブレーカーは、こちらの画像のように取付けられています。
また感震ブレーカーの種類はこの他にも、コンセントタイプや簡易タイプというものがあります。
コンセントタイプは、コンセントに内蔵されたセンサーが揺れを感知して電気の供給を停止し、
また簡易タイプは、おもり玉の落下やバネの力でブレーカーを切ります。
コンセントタイプも簡易タイプも電源を遮断するという意味では分電盤タイプと同じです。
ですが、コンセントタイプだけは、当該コンセントに接続された機器のみが電気供給停止の対象になるのです。
本来、感震ブレーカーという呼称は、感震遮断機能付きの分電盤を示す用語。
しかし現在はコンセントタイプや簡易タイプなども普及してきているため、これらを含めて感震ブレーカーと総称しているようです。
では、以下に感震ブレーカー「4タイプ」と、その特徴を記しますので参考にしてください。
感震ブレーカー 4タイプとその特徴
さて感震ブレーカーには、電気工事士による工事が必要なタイプと、
素人でも簡単に設置できる簡易タイプというのがあります。
もし、自宅(既設)の分電盤に自分で設置したいと考えている方は、簡易タイプを選択すると良いでしょう。
この場合、電気工事士の資格は必要ありません。また価格も比較的安価な商品が販売されています。
でも、自宅の分電盤に自分で設置できるというハードルの低さには感心しますね。
では、感震ブレーカーの働きについては先程も少し触れましたが、大体次の4つのタイプがありますので続いて説明します。
① 分電盤内蔵タイプ
各メーカーの分電盤タイプには、最初から感震(リレー)センサーが内蔵されており、地震発生時の基本的な作動の仕組みは次のようになります。
まず、感震センサーが震度5強以上の揺れを感知すると、3分間ブザーやランプで警報を発します。
その間、主幹漏電ブレーカーは作動しません。
すぐに作動しない理由は、避難する際、避難路の照明を確保したり、
3分以内にリセットスイッチを押すことで警報と主幹ブレーカーが切れるのを停止する仕組みのためです。
3分を経過すると、センサーが疑似漏電信号を出力します。
そして、その信号を主幹漏電ブレーカーが検知作動することで、電源を一括して遮断しています。
またメインの漏電ブレーカーが切れると、住宅内の照明は全て消え、コンセントに接続されている家電製品も全て使えません。
でも、この仕組みが通電火災を抑止する上ではとても効果があると期待されている所以なんです。
※分電盤タイプは電気工事士による電気工事が必要です。
② 感震リレー(後付け)タイプ
こちらの感震リレータイプも機能的には分電盤内蔵タイプと同じ働きをします。
分電盤内蔵タイプとの違いは、感震機能のない従来の分電盤でも感震リレーを後付けする事で感震機能を持たせる事ができる点です。
その際、既設の分電盤には漏電ブレーカーが設置されていなければなりません。
なぜかというと、感震リレーからの疑似漏電を漏電ブレーカーが検知して作動するからです。
また感震リレーの設置は分電盤の横(近く)に外付けするスタイルが一般的です。そのほうが電源と信号線の施工がしやすいですからね。
感震リレータイプは、主幹漏電ブレーカーの作動により、住宅に供給されている全ての電気を遮断します。ご注意を!
※感震リレータイプは電気工事士による電気工事が必要です。
③ コンセントへ差しこむタイプ
1つは、機器本体にセンサーが内蔵されていて、揺れを感知すると当該コンセントからの電力供給を停止する「とめ太郎」と、
「震太郎」というタイプがあります。
コンセントタイプには、電気工事が必要な埋込型と、下の「とめ太郎」のように既設コンセントに差込むだけで使えるタイプがあります。
とめ太郎本体にはコンセントが2つ付いており、そこに電気ストーブや白熱灯スタンド、または電気こたつ等(最大15A)を差込みます。
そのあと、とめ太郎本体をコンセントにセットして「開始(入)」ボタンをONにすると、
電気ストーブや白熱灯に電気が流れ通常通り使用できます。
しかし運悪く地震がきた場合、とめ太郎は揺れを感知し「カチッ」っという音とともに
「開始(入)」ボタンがOFF状態になり電源が遮断されます。
すると遮断表示ランプが点灯し、とめ太郎のコンセントに接続された電気製品は電源が切られた状態になるというわけです。
また電気工事が必要な埋込型は、既に設置してあるコンセントを撤去した後、
感震センサー付きコンセントと交換する必要があるため、電気工事士による工事が必要です。
一方、コンセントに差込んで使用するタイプは、元々設置してあるコンセントに差込むだけなので工事の必要がなく、素人でも設置できます。
④ 簡易タイプ
簡易タイプには、おもり玉の落下を利用してブレーカーを切るタイプと、バネの力でブレーカーを切るタイプがあります。
おもり玉の落下を利用するタイプ
このタイプは、紐の片方に約45gのおもり玉、もう片方にブレーカーハンドル用のキャップが付いています。
作業としては、おもり玉を載せる本体を分電盤に貼り付け、キャップをブレーカーハンドルに被せれば完了です。
画像だと、おもり玉を載せる本体の設置位置がブレーカーハンドルの右下にきていますが、
実際に取付ける場合はブレーカーハンドルの真下に取付けましょう。
最後にテストです。方法は、おもり玉を指ではじいて落下させるだけです。
おもり玉とブレーカーハンドルは紐で繋がってますから、
その落下する重みでブレーカーを切るという仕組みなんです。超~アナログ!
バネの力を利用するタイプ
後者の、バネの力で切るタイプは、本体に内蔵してある感震センサーが震度5強以上の揺れを感知するとバネが作動します。
バネが作動すると、それと連動しているベルトが移動してブレーカーハンドルを押し下げ、電源を遮断するという仕組みになっています。
また、両タイプとも、メインブレーカーを切る事で住宅に供給されている電気全てを遮断しています。
そのため、もし夜間に感震ブレーカーが作動した場合は、玄関へ通じる廊下や階段等の照明も全て消えてしまいます。
もしそうなると、暗闇の中を手探り状態で玄関を目指すことにもなりかねません。
安全に避難するためにも、是非、懐中電灯を備えておきましょう。
※簡易タイプは電気工事の必要がなく、誰でも設置できます。以上が主な感震ブレーカーの種類と特徴でした。
通電火災とは、どんな火災?
通電火災の通電には、電流を通すという意味があります。
なので停電状態から復旧(通電再開)するのを機に発生するのが、通電火災という事になります。
この通電火災が起こる大きな要因としては、地震の発生と、その後に起こる停電、そして通電再開が関係しています。
例えば、平常通りの生活をしている所に、突然大きな地震が起きた場合、
部屋の中の家具類は転倒し、収納している衣服や用紙など様々な物が床に散乱します。
しかも寒い季節であれば、当然電気ストーブやその他の暖房器具等を使用していることが考えられます。
そんな状況下で、今度は停電の発生です。
そうなると、さっきまで使用していた電気ストーブや暖房器具の電源プラグを抜いたり、
分電盤のブレーカーを切ったりする事よりも、まず家の外へ避難することを優先すると思います。
その後、数時間か数日後に停電が復旧し通電が再開されます。
でも家の中では家具や衣服、用紙等の可燃物が電気ストーブに被さったり接触したりしているかもしれません。
もしそうなると、衣服や用紙等に着火し火災になるのを止めることはできません。
そこで、この通電火災を防ぐために有効なのが感震ブレーカーの設置です。
そうすれば地震を感知し分電盤の主幹ブレーカー(アンペアブレーカーや漏電ブレーカー)を自動で切ってくれます。
でも何はともあれ、自分自身が安全な場所へ避難することが最優先ですので十分に注意しましょう。
簡単な例えを記しましたが、以上が、通電火災を引き起こすメカニズムでした。